「議論しても決着がつかないなら、とりあえず手を動かしてみよう」という状況は少なくありません。特にスタートアップの世界では、社内での不毛な議論を続けるより、まずは動くもの(プロダクトの最小実装やプロトタイプ)を世に出し、市場(≒ユーザー)の反応を得ることが有効とされています。実際のユーザーに試してもらうことで、理論上の仮説や想定だけでは得られない示唆が得られるからです。
とはいえ、「まず作ってみる」という姿勢が正しいとしても、それまでの議論をどこまで縮められるのでしょうか。「手を動かす前に一切議論しない」というのは極端な考え方です。何も考えずにプロダクトを作って出しても、期待する学びは得られず、リソースを浪費してしまいかねません。必要な議論をいかに短く効率的に行うかが、鍵となるでしょう。
「動くもの」を提供する前に必要な議論
「とりあえず動くものを作ろう」と決断する前に、最低限以下のポイントについては議論する必要があります。
- 何を作るべきか:検証したい仮説や導きたい結論に直結する、最小限の実装は何か。
- スケジュール:どれくらいの期間で動くものを作るのか。
- 開発:
- 開発体制・役割分担
- 開発プロセス
- 技術選定
- 品質
- ターゲットユーザー:誰に見せて、どのようなフィードバックを得るのか。
- 測定方法:どんな指標やデータで、成功や失敗を評価するのか。
これらのポイントを押さえずにただプロトタイプを作っても、「なんとなく作ってなんとなく出した」だけで終わり、結論を得るための学びにはつながりません。結局は社内リソースを消費しただけの結果となりかねないのです。
議論を短く、動作検証を早く
上記のような基本項目については、動くものを提供する前に、どうしても議論が必要となります。ただし、議論の量を減らせなくとも、その進め方は改善可能です。一つひとつの論点について、クイックな合意形成や決定を行い、必要最低限の情報を得たら即行動に移すことで、全体的な意思決定サイクルを高速化することができます。
結論としては、「議論するな」ではなく、「必要な議論を極力スピーディーに行い、そのうえで実際の市場反応を見るために早めに手を動かす」ことが大切だといえます。議論と実行をバランス良く行うことで、より短いサイクルで仮説検証が可能となり、最終的には高い精度で市場やユーザーのニーズに応えるプロダクトへと近づいていくことができるのです。