はじめに
かつては「エンジニアはひたすらコードを書いていればよい」という誤解がありました。しかし近年、エンジニアに対しても高いコミュニケーション能力が求められることは、もはや常識となりつつあります。とはいえ、これからエンジニアを目指す方や現場を知らない方にとっては、「なぜエンジニアにコミュニケーションが必要なのか?」と疑問に感じるかもしれません。
以下では、自社開発エンジニアを主な例として、その理由について具体的に解説します。
コミュニケーション能力が必要なシーン
チーム開発
企業でエンジニアとして働く場合、基本的にはチーム単位で開発が進みます。一人で開発を完結するケースはごく稀で、他のエンジニアやデザイナー、プロジェクトマネージャー、カスタマーサポートなど、多くの関係者と関わりながらプロダクトを育てていくのが一般的です。
このとき、相手の意図を正しく理解し、自分の考えを適切に伝える力がなければ、作業の遅延やトラブル、チームの士気低下にもつながります。逆にスムーズな意思疎通が図れれば、チーム全体の生産性や品質向上が期待できます。
要件定義
エンジニアは、Backlogやチケットなどで提示される要望をもとに、求められる機能や仕様を整理する「要件定義」を行います。この過程で不明点やあいまいな要望があれば、適切な質問や提案を通じて要件を明確化しなければなりません。
コミュニケーションを疎かにしてしまうと、要求を正しく理解できず、結果として求められた品質や機能を満たせないプロダクトを作ってしまいます。また、相手が気づいていない改善点や簡略化の余地を指摘することで、開発効率を高めることも可能になります。
マネージャー職へのキャリアパス
エンジニアとして経験を積むと、やがてエンジニアリングマネージャーやプロダクトマネージャーなど、組織やチームを率いる立場へのステップアップが見えてきます。これらの管理・調整業務は、人間関係の構築や意志決定、業務分担、評価といった「人を動かす」要素が多く、コミュニケーションスキルは必須です。
テックリードなど、技術に特化したポジションでも、仕様検討やレビュー、メンターリングなどにおいて他者と意見を交わす場面は多々あります。したがって、キャリアアップを考えるうえでも、コミュニケーション能力の向上は避けて通れない課題となります。
まとめ
エンジニアという職種は「技術力」を軸としていますが、ビジネスを円滑に進め、多様な役割のメンバーと協働するには、コミュニケーション能力が欠かせません。
「コードが書ければいい」という時代は過ぎ、相手の立場を理解した上で、適切な情報共有やフィードバックを行える柔軟なコミュニケーション力が、エンジニアとしての価値を一層高めることになります。